スタートアップを考える|”投資される起業家”の共通点とは

前回の記事では、「スタートアップを考える|踏みとどまる理由と後押しする存在」ということで、諸外国に比べての起業意識はまだ低いものの、最近では学生起業に始まり、20代の若者の起業・スタートアップが増えていることにスポットを当てました。そんな若き起業家が増加する理由の一つとして、起業の後押しをしてくれる投資家の存在が挙げられます。
今回は、「投資家に選ばれる起業家とは一体どんな人間であるのか」「投資したいと思わすことのできるビジネスとはどういったものなのか」に焦点を当てて進めていきたい。
まず、本題に入る前に「起業家と投資家の関係性」と「なぜスタートアップ企業に投資する投資家が増えたのか」について考えてみたいと思います。

起業家と投資家の関係性

起業を考えたときの資金調達の方法に欠かせないのが「投資家」の存在です。
いわゆる「ベンチャーキャピタル」「エンジェル投資家(個人投資家) 」などと呼ばれる人たちのことです。

このような投資家たちは、将来的に有望な事業であると彼らが判断した段階で、あなたのような無名の起業家にも資金を提供してくれる有り難い存在です。
しかも前回お話したように、「融資」ではなく「出資」であり、わかりやすく言い換えれば、「返さなくて良いお金」を提供してくれるのです。つまり、そのお金は起業家の「自己資本」となります。

一般に、仕事として投資活動を行うベンチャーキャピタルの場合は、経済的な利益の追求を求めるケースがほとんどであることに対して、個人投資家(エンジェル)の場合は、自ら起業して成功し、事業活動で得た資金を使って次の世代を育てようという人が多い傾向にあります。また、投資に対する考え方はそれぞれ異なり、経済的利益の追求よりも、自らが投資するベンチャー企業の経営者のビジョンや事業的な魅力に惚れ込み、応援したいという気持ちから投資をスタートするケースが多いようです。
つまり、このような個人投資家との出会いが、起業家のビジネスを飛躍させるきっかけとなることが多いのです。

現在、投資の在り方として増えているエンジェル投資(個人投資)は、企業への出資という形をとります。「出資」は、資金を提供し、株式を取得する仕組みで、投資家は企業の成長にあわせ配当や株式売却によるキャピタルゲインを獲得します。事業が立ち行かなければ、配当もなく、株式売却時に損失が発生します。
一方、起業家は、投資家から資金を得る見返りに、会社の株式を提供することになります。銀行融資と異なり、返済や利息を支払う必要のない資金を獲得することになるので、通常は担保や個人保証も求められません。

しかし、投資家に会社のオーナーになってもらうので、経営に口を出す人が増えることになります。

①事業の見通し(事業計画)、
②株式の持ち分をどうするか(資本政策)、
③エンジェルが何を期待して投資をするのか、
④投資家それぞれの人柄

など、投資家と起業家の双方でさまざまな点を十分に確認する必要があるのです。

また、エンジェル投資では、経営の経験を持つ人や投資対象の事業に共感を持つ人が投資家になることが多い状況です。
実際、投資の動機として「企業の成長プロセスを楽しみたい」「社会貢献をしたい」等の精神的な満足を求める投資家が多く、たとえ株式を売却した時に利益が出なくても、「自ら育てた」ことに満足感を覚える人が多いという経済産業省の調査データも発表されています。

投資先として多い事業分野と課題

このような「エンジェル投資」を後押しする制度がエンジェル税制です。エンジェル税制は、一定の要件を満たす創業間もない企業に株式投資した投資家が、その投資額を、課税対象となる所得又は株式譲渡益から控除できる制度です。すなわち、投資額の分、税金計算の対象となる金額が減り、納税金額が少なくなるという仕組みです。このようなエンジェル税制が起業家増加に起因してるとも言えるでしょう。

では次に投資する事業分野として多いのはどういったビジネスなのでしょうか。株式会社野村総合研究所が実施した「個人投資家によるベンチャー企業等への投資活動の実態に関する調査」のデータを参考してみると、未上場企業投資の事業分野として最も多いのは、卸売・小売業(20.8%)、次に製造業(14.4%)、3 番目がSI・ソフトウェア関連(12.8%)、インターネット・モバイル関連(11.2%)であり、企業と知り合ったきっかけは「同僚・知人・親族として知り合いだった」( 65.7%)が最も多く、 「他人の紹介」( 25.9%)、「交流会等で出会った」(14.0%)等、 元々の知り合いの企業に投資を行っているケースが多い傾向があります。

上記の分野に対し、さかんに行われるエンジェル投資ではありますが、投資家達にもいくつかの問題を抱えています。
投資先企業の情報が周囲にあまりないこと、投資先の評価を行うことができないことが、未上場企業への投資を行ったことがない個人投資家たちが抱える問題のようです。
つまり、事業に将来性があり、それをうまく投資家たちに伝えることが、起業に対する資金を引き出すためには重要になってくるのです。

それでは本題となる「投資家に選ばれる起業家とは一体どんな人間であるのか」「投資したいと思わすことのできるビジネスとはどういったものなのか」について、実際の投資家の方の生の声を聞いてみることにしましょう。





“投資される起業家”の共通点とは
–小笠原治×千葉功太郎 エンジェル投資家対談

先日動画で公開された「投資家とスタートアップ」をテーマに行われたSENSORSサロン。ゲストは投資家・起業家であるABBALab代表取締役 小笠原治氏と、個人投資家・起業家であり、今年6月にDrone Fundを立ち上げた千葉功太郎氏だ。 そのゲストの投資家お二人にMCの齋藤精一氏と落合陽一氏を交えて「投資家に選ばれる起業家の共通点」についてトークが進められた。
MCの齋藤精一氏が「日本にスタートアップは根付かないのではないか」と語るように、国内の起業率は欧米諸国に比べて依然として低い。しかし1999年に始まったインターネットバブル以降、日本にもエンジェル投資家が生まれ、起業のハードルは着実に低くなりつつある。 ドローンやIoTなど最先端テクノロジーに投資する二人は、どのような視点で起業家を判断しているのだろうか?
今回は、番組にゲストとして出演していたこのお二人の投資家から「投資家に選ばれる起業家の共通点」を学んでいきたいと思う。

「"投資される起業家"の共通点とは--小笠原治×千葉功太郎 エンジェル投資家対談」の画像検索結果

1. 投資家二人の考える「起業家の見極め方」とは

齋藤氏:
僕が11年前にライゾマティクスを創業した当時、そもそもエンジェル投資家が一般的な存在ではありませんでした。
日本はまだケーススタディが少ないと思いますが、日本人は事業の質だけではなく、人間性も投資の判断材料にしていると伺っています。ゲストのお二人は、投資する起業家をどのような基準で選んでいますか?

小笠原氏:
欲望が明確な人は投資しやすいです。
たとえばtsumugを創業した女性起業家は、元彼に無断で合鍵を作られていたことが起業のルーツ。鍵を閉めることは安全だと思われがちですが、物理的な鍵はコピーされるリスクがあり、不法侵入される危険性があります。世の中から物理鍵をなくし、もっと安全な世の中にしたいという強烈な想いがあるのです。

Gateboxは、もともとコミュニケーションが苦手な人同士が共通の趣味を見つけるサービスを展開していた企業です。しかし販売が伸びず、あきらめるか、自分が本当にやりたい事業で再挑戦するかを迫られていました。そのときに初めて、自分は生身の人間とコミュニケーションが取りたいのではなく、好きなキャラクターとコミュニケーションを取りたいのだと気づいたそうです。
二人の共通点は、目指したい世界や作りたいプロダクトがはっきりしていること。モチベーションが自分の中から出てくる人は信頼できます。

千葉氏:
自分がやらなくてはいけない理由が明確にある人材を選んでいます。僕が投資した酪農・畜産向けクラウドサービスを展開するファームノートの創業者は、祖父が農業を営んでいたが、経営上の都合で父が離農してしまった生い立ちがあります。「農家を復活させたい」という想いは、農家に生まれたからこそ出てくるものです。
もう一つは、「いい奴」であること。起業家は経営的に事業が苦しい局面を迎えることがあります。そうしたときに、グレーゾーンに手を出す人も少なくありません。しかし投資家の仕事は、投資して終わりではありません。長い付き合いをするので、やはり誠実な人材が望ましいです。

齋藤氏:
具体的に、どれほどの期間でお付き合いをするんですか?

小笠原氏:
10年とは言わないまでも、追加出資を行い、数千万〜数億円の投資をしながら何年も付き合うケースもあります。千葉さんがおっしゃるように、投資して終わりということではないんです。

落合氏:
僕が創業した会社は、シード期に投資をいただいた投資家と今でも週に一度ミーティングを行うほど密接な関係です。
IPO(新規株式公開)を見据え始めるステージA以前は、会社をどのように運営したらいいのか分かっていないことが多いですし、パートナーを紹介してもらおうにも人脈がありません。ある程度事業が軌道に乗るまでは、経営以外のことまでサポートしてくれる”兄貴肌”の投資家が必要になると思います。

2. ステージごとに変わる、投資家の役回り

千葉氏:
僕は「餅は餅屋」の考え方を重視しています。つまり、起業家が万能である必要はない。たとえば落合さんなら、モノづくりにフォーカスすべきなんです。起業家はプロダクトを作ることに徹し、投資家はそれを支える”高度な雑用係”であるべき。

落合氏:
シード期(計画・準備段階)だと、生活の面倒までみることもあります。たとえば事業が回りはじめ人手不足になったときは、投資家が人材派遣業者に掛け合ったり。

千葉氏:
僕は不動産物件を紹介したこともあります。起業家に「安い家賃で住める物件を知りませんか?」と相談され、不動産業者に問い合わせました。

齋藤氏:
お話を伺い、投資家の印象が変わりました。というのも、知人のスタートアップは海外から投資を受けている人が多いのですが、海外の投資家は比較的放置するのが基本。コミュニケーションを取るとはいえ、事業の調子について尋ねるくらいです。

千葉氏:
ステージによって関わり方は変わります。
シード期以前に投資を行うのであれば、投資家は「一緒に会社を経営する」感覚で仕事をします。逆にIPOが視野に入ってくるステージB(事業拡大段階/調達額 約10億円)やステージC(上場目前)になると、「数年で何倍の規模まで成長するか」という計画を立てることが仕事になるんです。


まとめ

いかがだったでしょうか。投資される起業家の共通点として「欲望が明確」「誠実な人材」「いい奴」などが挙げられました。自分が作り上げたいプロダクトが明確であること、誠実で正直で素直な人間であれということ。これらの投資される起業家の共通点は、どの成功哲学やビジネス書でも多く書かれている基本的なことばかり。
そして誠実に実直に取り組むためにも、本当に自分がやりたいことを見付け、長く愛し続けることが出来るビジネスに取り組まないといけないということなんですよね。中途半端な気持ちでは、一流の投資家の方にはすぐに見破られてしまいます。まず起業やスタートアップを考える最初の段階として、「本気で好きになれるビジネスなのか」を自分自身に何度も問いかける必要があると思うのです。あなたの得意な分野は何ですか?あなたが大好きなコトやモノって何ですか?

「天才は努力する者に勝てず、努力する者は楽しむ者に勝てない」
(知之者不如好之者、好之者不如樂之者)

という孔子の言葉があります。つまり自分のビジネスを本気で好きになり楽しめることができれば、投資家を巻き込むこともできるでしょうし、成功へ近付くこともできると思うのです。
どんな逆境や困難にも耐えることのできる本気で愛せるビジネス・事業を是非見付けて下さいね。





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