スタートアップを考える|インバウンド事業の大いなる可能性

「和歌山はインバウンド向けの魅力ある地域である」
私自身が和歌山出身者なだけに贔屓して言っているわけではない。確かに和歌山は大阪や京都、神戸といった関西の人気都市に比べると、地味な存在であることは否めない。だが、熊野古道や高野山に代表される歴史あるスポットや温泉地として名高い白浜温泉もある。海と山に囲まれた幸ある和歌山に在住の方ならその魅力は分かるはずだ。そして自治体も「インバウンド」への取り組みは、他府県に比べいち早く取り組み、イニシアチブを取ってきた。だがまだまだ十分ではない。関西国際空港から車で30~40分といった地の利もまだまだ活かしきれていない。今回は、そんな「和歌山のインバウンド事情とこれから」を題材にして進めていきたいと思う。

また後半では、投資家・起業家であるABBALab代表取締役 小笠原治氏とDrone Fund代表の千葉功太郎氏、MCの齋藤精一氏と落合陽一氏を交えたSENSORSサロンで「投資家が投資したい分野」としてピックアップされたキーワード「インバウンド」に関するディスカッションについても取り上げてみたいと思う。

和歌山のインバウンド需要2017

「和歌山 インバウンド」の画像検索結果

和歌山はインバウンド向けの魅力ある地域だ

インバウンドに対し10年以上前から先駆的に手を打った和歌山。しかしインバウンド需要は未だ成長過程であり、ビジネスチャンスや商機はまだまだ多く残されている。香港の旅行会社「美麗華旅遊(ミラマトラベル)」の李振庭(アレックス・リー)総経理は、香港人の訪日動機の新たな傾向を教えてくれた。

「もはや東京や大阪は見尽くした。香港人が注目するのは地方。それも、日本の原風景が見られる地域だ」

李総経理が感じる、香港の日本通の旅行トレンドは日本の地方だという。日本人の国内旅行を考えれば、それほど人気が高くない地域が外国人にとっては人気の高いスポットになる。
理由はいくつかある。まずは、都心のホテルの価格の高さだ。円安によって大量の外国人が訪れ、東京や大阪では宿泊料金が跳ね上がっている。その点、地方では宿泊料金がまだ安い。
さらに、売りになるのが「静かさ」だという。「従来は東京や大阪など、都心でにぎやかな地域が好まれた。だが、今は日本の歴史を感じる原風景が見られる地域が人気。インバウンド対策で乗り遅れた地域にこそチャンスがある」と李総経理は続ける。大陸の中国人観光客が大量に押し寄せる都心は「うるさい」と敬遠する香港人が少なくないようで、静かな地方都市を訪れるのがブームだという。

コンテンツとして魅力を感じるのは「体験もの」だ。そば打ちなどのレクリエーションをはじめ、和歌山が実施する果物狩りなどが特に人気が高い。日本のフルーツは香港や台湾ではブランド物としてとても高価だ。そのため、現地で安く、それも新鮮な物を食べられる機会はとても喜ばれる。
日本の原風景は、国内観光客には「当たり前」の景色としていまひとつ集客に結び付かなかったかもしれない。だが、外国人からすると新鮮に感じるのだろう。

「いたずらに都会化せず、地方の特色をそのまま出すだけで、そこが観光になる。その点に自治体が気付くべきだ」(李総経理)

このことからも、和歌山で企業やスタートアップを考えているのなら、外国人にとって魅力に感じてもらえるこの地で「インバウンド」に焦点を当て取り組むことは大いに商機と勝機が感じられる。ブームに乗った一時的な対策ではなく、中長期的な視点で粘り強く取り組む必要はあるが、プロダクトアウトではなくユーザーインの視点で「インバウンドビジネス」へ参入することに私は大いに賛同である。

和歌山)紀伊半島、世界の旬の観光地ランキングで5位

世界の旅行者は紀伊半島を訪れるべきだ――。世界的に有名な旅行ガイドブック出版社が最も旬な旅行先を紹介する世界ランキング「Best in Travel 2018(地域編)」で、高野山や熊野古道などの世界遺産がある紀伊半島が5位に選ばれた。「神社仏閣や雄大な自然など日本の魅力にあふれ、人混みもない。関西の都市特有の騒がしさから遠く離れている」と、山深さや静けさなどが高評価を受けた。

ランキングは、オーストラリアの出版社の旅行ガイドブック「ロンリープラネット」のライターらが、世界で訪れるべき上位10の国・地域・都市を選んで公表し、同社サイトにも掲載。県観光交流課によると、同ガイドブックは英語圏でのシェアが大きく、外国人旅行者への波及効果が期待される。これまでのランキングでは日本が2位に選ばれたことがあるが、日本の一地域が選ばれるのは珍しいという。

同課によると、今回のランキングで、紀伊半島は、米アラスカやスロベニアのユリアンアルプスなどに次ぐ高評価。評価されたポイントは「自然景観や温泉、伝統文化など都市部にはない魅力」。同社サイトでは、高野山や熊野古道、白浜、潮岬などの名所を列挙。「京都や大阪など主要な観光地の南側に位置し、たくさんの魅力にあふれている」と述べている。

同課は「選ばれたことを契機に、プロモーションや受け入れ体制の整備を進めていきたい」と話している。(土井恵里奈)

朝日記事デジタルより引用]

市内にこそインバウンドのビジネスチャンスが溢れている

ここまでで気になることはただ一つ。外国人に人気のスポットとしてフォーカスされているのが、高野山や熊野古道、白浜といった和歌山市内から遠く離れた地域ばかりだ。では、和歌山市には外国人には魅力的ではないのだろうか。いやいや、和歌山市はまだまだ外国人に対しての魅力発信・アウトソーシングが不十分なだけだと私は思うのである。逆を返せば、人気あるスポットである高野山や熊野古道、白浜に比べて、潜在的なインバウンド需要が見込める地域だと思うのです。

和歌山市と和歌山市隣接地域の魅力

和歌山は、和歌山県の北部に位置するエリア。
和歌山市で人気の観光スポットは、和歌山城。この城は、戦国時代(1467–1590)から安土桃山時代(1467–1590)に活躍した武将・豊臣秀吉が、弟の秀長に建てさせたもの。江戸時代(1603-1868)には徳川家康の息子である頼宣が城主となり居城していた。明治時代(1868-1912)に廃城となり、和歌山公園として一般に公開されることとなる。第二次世界大戦中に一度焼失し、現在の姿は復元工事で蘇ったもの。

和歌山市は海に面しているので、自然の景観も美しい。加太や和歌の浦は夕陽スポットとして人気がある。和歌山市の南側に隣接した海南市には和歌山マリーナシティがある。その中の黒潮市場では、地元で捕れた新鮮な魚介類が販売されている。市場には物販コーナーのほか、飲食コーナーもありその場で食べることもできる。

また最近話題になっているのが、和歌山市内と紀の川市を結ぶ和歌山電鐵貴志川線である。話題になった理由は、貴志川線の終点である貴志駅の猫「たま駅長」が人気を集めたため。現在は2代目のニタマ駅長が跡を継いでいる。貴志川線ではたま駅長をモチーフにしたデザインの列車、水戸岡鋭治氏がデザインしたいちご電車やおもちゃ電車などが走っており、ここでしか乗車できない特別な車両も魅力的だ。

エリア内の移動は、電車が便利。和歌山市の中心となる和歌山駅までは、関西国際空港から電車や車でたった30~40分の場所にある。しかも、和歌山県の人気エリアである高野山や熊野古道、白浜に行くには、和歌山市を経由する必要がある。
このことからも、和歌山市は、インバウンド向き、海外からの観光客を呼び込みやすい地域だと言えるのではないだろうか。

和歌山県紀美野町 観光PRムービー「訪日外国人観光客”0″の町」

和歌山県北部に位置する紀美野町が、町のPRに作成した動画が話題をよんでいます。通常は観光やインバウンドを目的とした動画プロモーションは、その町の良いところをPRするものですが、紀美野町が作成した動画は「豊かな自然や沢山の見どころがあるにも関わらず、関西国際空港、高野山から車で1時間の紀美野町を訪れる訪日外国人は”ゼロ”」と逆説的にその魅力をアピール するユニークな動画となっています。

西日本の空の玄関口である関国際空港にやってくる外国人は年間1200万人、日本仏教における聖地の1つとして有名な高野山に滞在する外国人は年間7万6千人いますが、『車で僅か1時間の距離にある和歌山県紀美野町を訪れる訪日外国人はゼロである』という紹介から動画は始まります。
その後、地元の野菜で作った野菜ジェラートが食べられる「キミノーカ」、ベジタリアン料理が楽しめる「くらとくり」などのおすすめスポットの紹介、日本有数の星空の名所である紀美野町には「みさと天文台」があるなどといった内容が紹介されています。

動画の中では訪れるところはあまり無いとしている和歌山県紀美野町ですが、季節ごとに様々なイベントを開催しており、紀美野町観光協会が作成している「きみのめぐりコンシェルジュ」という、町の紹介をしているウェブサイト(ホームページ)においても、日本語の他に、英語、中国語、韓国語で多言語化されたウェブサイト(ホームページ)が用意されており 、しっかりと町をPRしています。

その 「きみのめぐりコンシェルジュ」によれば、以下のようなイベントが開催されているようです。

時期 イベント
3月下旬 熊野神社春祭り
生石高原山焼き
7月初旬 みさと七夕フェスティバル
8月15日 きみの夏祭り
10月 野上八幡宮秋祭り
十三神社秋祭り
11月下旬 柿の市

「で、実際に紀美野町に訪れる外国人はゼロなの?」ってことなのですが、地域経済分析システム(RESAS(リーサス))で、2015年8月から2016年7月に和歌山県紀美野町周辺を訪れた外国人を、地域経済分析システム(RESAS(リーサス))の観光マップ「外国人メッシュ」で見たところ、高野山で知られる近隣の高野町にはインバウンド流入が相当数あることがあるのだが、たしかに紀美野町を訪れた外国人観光客は、限りなくゼロに近いということがわかった。

では、動画公開以降のインバウンド流入は増えたのでしょうか。実際のところ、このYoutube動画も現時点(2017/11末)では、再生回数14,163回と伸び悩んでる現状にあります。
このことからも、「動画を作成してYoutubeにアップロードすれば話題になる」というほど単純なわけではなく、海外の人気の観光地の例を参考にしてみたり、ウェブサイト(ホームページ)、Facebookページ、Youtubeチャンネル、Instagram、Twitter、Google+などのアカウントを作成して、それぞれをしっかりと運用することがまだまだ必要と考えられるのです。

どのような運用が正解という事はありませんが、世界でも人気の観光地が人気なのは、単純に美しい自然風景があるから、地理的に恵まれているからだけとは限りません。世界で人気の観光地は、こうした各種SNSの運用を見ても先進的な試みをしています。 各種SNSの運用についてはページの開設などは無料で出来ますし、「どのような事例が世界的に受けるのか?」という視点でPDCAを回して行けば、徐々にではありますが効果が出てくるのではないでしょうか。

訪日客の地方誘致に重要なのは、まず「知ってもらうこと」。その点においては、紀美野町や和歌山市、和歌山市近隣地域にはやりべき事は多く残されているでしょうし、潜在的にもまだまだ伸びしろがあると考えられるのです。





投資家が注目するキーワード「インバウンド」
–小笠原治×千葉功太郎 エンジェル投資家対談

日本は世界で最も起業しやすい国。起業先進都市、福岡にみる地方起業の可能性

齋藤精一氏(以下、齋藤氏):
以前、千葉さんの経営される湯河原の旅館「The Ryokan Tokyo」に宿泊したことがあります。襖に富嶽三十六景が描かれ、鳥居が並び、外国からみた日本のイメージをそのまま形にしたようなエンタメ性の高い旅館です。それなのに、宿泊客のほとんどは日本人だったんです。これは想定外の出来事ですか?

「The Ryokan Tokyo 外国人向け」の画像検索結果

千葉功太郎氏(以下、千葉氏):
そうですね。設立当初はほとんどのお客さんが日本人でした。「The Ryokan Tokyo」ではアクティビティを提供しており、いくつか例を挙げると、お琴の練習会やコマ回し。他には無料で手持ち花火をプレゼントしています。都心では気軽に花火ができないので、日本人の方がとても喜んでくださるんです。ようやく訪日外国人観光客の方にも認知していただき、現在は6割くらいが海外のお客さんです。

落合陽一(以下、落合氏):
逆に海外展開しても人気が出そうですね。サンフランシスコなんか相性が良さそうです。

千葉氏:
海外展開も視野に入れていますが、国内にも力を入れていきたいと考えています。インバウンド事業を展開している理由の一つでもありますが、僕は日本が大好きなんです。日本は海外と比較し法人税が高い国ですが、それでも日本に籍を置いているのは日本が好きだから。「The Ryokan Tokyo」は空き家をフルリノベーションして作っているので、地域活性にも寄与していると思います。

小笠原治氏(以下、小笠原氏):
日本という枠組みを越えて、地域として盛り上げていくのも面白いですよね。現在、福岡市がスタートアップ都市として売り出しています。海外からスタートアップの人が福岡に訪れてくれるよう「スタートアップビザ」を発行し、福岡市で起業するならビザを取得しやすくする取り組みです。

千葉氏:
ビジネス視点で考えると、福岡はアジア各国から物理的な距離が近く地の利が良いですよね。

小笠原氏:
おっしゃる通りです。福岡市の職員には、大企業のイノベーション担当者よりもスタートアップやイノベーションに精通している人が多く、公共機関のなかでは圧倒的に先進的な取り組みをしています。福岡市には「大名エリア」と呼ばれる、東京で例えるなら渋谷に似た地域があり、現在使われていない小学校の校舎をスタートアップのインキュベーション施設にしています。100社以上のスタートアップがそこで活動し、オープン半年で入居企業の資金調達が20億を超えており、海外から起業をするために福岡に拠点を移す人もいるくらいです。

千葉氏:
海外の起業家たちには、日本で起業するということを検討してほしいです。日本は生活コストも起業するコストも安いんです。それでいて、衣食住すべてのクオリティーが安定しています。また日本は世界的にみてもIPOしやすい国であり、東証マザーズはIPOしやすい取引市場として有名です。世界的にはM&Aぐらいしか出口がないところを、日本ではM&AとIPOの二つの出口があります。

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地方以上、東京未満。起業しやすい都市の条件
–起業する拠点として日本を選び、そしてどこの地方に拠点を置くかという選択肢があるのは魅力です。東京と地方、起業しやすいのはどちらだとお考えですか?

齋藤氏:
政府が”世界で一番ビジネスがしやすい環境”を創出する国家戦略特区構想を打ち出していますが、その多くは東京都です。今後もインキュベーションセンターが生まれ続けスタートアップの数は増えていくでしょうが、思惑ほどスタートアップは生まれていないと感じています。
地方創生が各地で叫ばれている現状を鑑みても、地方の地場産業に合わせてインキュベーションセンター作るなど、分散させていく方針を取った方がいいのではないかと思っています。

小笠原氏:
分散は大事ですが、ある程度の都市でなければ機能しません。利便性が確保され、一定のコミュニティが生まれる規模感は必要です。たとえばアーティストやデザイナーのためのシェアスペースをリノベーションによって形だけ作ったところで、そもそもシェアスペースとして機能するように設計・建築されていない時点で効果は限定的でしょう。 ただ地方を再開発する際に、最初からシェアスペースとして設計すれば可能性はある。東京よりも地方の方がコストは低いので、特色も出しやすいと思います。

齋藤氏:
法整備も必要になりますよね。福岡市は免税を行っていますが、そうしたシステム設計まで踏み込んだ施策を打つのが必須だと思います。具体的に「ある程度の都市」の規模感とはどれくらいでしょうか?

小笠原氏:
100万人前後、もしくはそれよりも少し多いくらいの地域には大きな可能性があります。福岡市の人口は156万人(2017年9月現在)で、とても扱いやすいスケールです。必要なインフラが揃っているので、方向性をしっかり決めるリーダーさえいれば問題なく機能します。

落合氏:
公共機関がニーズを追えていないのも感じています。たとえば、IPOを控えるシリーズB(事業拡大期/調達額約10億円)、シリーズC(上場直前期)を迎える企業よりもシリーズA(製品開発・初期マーケティング期)、シード期(計画準備段階)の企業の方が多い。要するに、家賃を抑えたオフィスにより需要があるのに、現状はそうなっていません。「この国、この地域に籍を置く起業家はどのフェーズにいるのか?」を把握すれば問題は解決できますが、意外にもトラッキングできてないのです。

齋藤氏:たしかに、実利的に機能する段階には至っていないですよね。オープンデータもそうで、結局エクセルのシートをネット上に公開しているだけだったり。オープンといえばオープンかもしれないですが、求められているニーズとは合致していません。

落合氏:
ブロックチェーンを応用することで、綺麗にトラッキングできます。そうした動きをしていかないと、結局のところ海外諸国のようにスタートアップ文化は根付いていかないんです。


まとめ

「起業家が育たない」「若い起業家が輩出されない」と言われている和歌山県。果たしてそうなのだろうか。もしあなたが和歌山で起業したい、スタートアップさせたいと考えているのであれば、「インバウンド」関連の事業に取り組むには最適の地域と言えるのではないでしょうか。SENSORSサロンのディスカッションで千葉氏も語るように、日本は生活コストも起業するコストも安く、衣食住すべてのクオリティーが安定しています。そして世界的にみてもIPOしやすい国なのです。その日本の中でも地方は東京よりも地方の方がコストは低いので、特色も出しやすい利点もある。福岡市が行っている免税などの法整備が和歌山にはまだまだ必要ではあるが、外国人に向けたインバウンドビジネスには大きな魅力を感じるのです。そんな和歌山での起業、スタートアップを考えるWAKAMONO達を、私は応援したいと思う。





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